マーレコラム飼い主さま向けコラム
小型犬に多い橈尺骨骨折とは?原因・治療・予防までやさしく解説

橈尺骨骨折とは?小型犬に多いケガの特徴
橈尺骨骨折は犬の前肢の骨(橈骨と尺骨)に発生する骨折のことで、特に手首周辺での発生が多いとされています。国内では、トイ・プードルやイタリアン・グレーハウンドなどの小型〜超小型犬での発生が極めて多く認められています。
この骨折は「抱っこから落ちた時」「フローリングで滑った時」「低めのソファから飛び降りた時」「走っている時」などの比較的弱い力によっても生じるため、日常生活からそれらに対して注意する必要があります。

どんな症状が出るの?気づくポイントと注意点
橈尺骨骨折を生じるような場面において、「急に前脚を上げて、激しく痛がる」というのが一般的な症状です。また、発生の多い手首周辺には筋肉量が少ないことから、時折、開放骨折(骨が皮膚を損傷させる骨折)を生じる場合があり、比較的緊急性を要することもあります。

どうやってわかるの?診断の流れについて
飼い主様の稟告および獣医師による視診などから、橈尺骨骨折を疑い、レントゲン検査を行うことで確定診断に至ります。また、骨折部周辺の毛刈りを行い、開放骨折の有無を確認します。

手術が基本?治療法とその選択について
ほとんどの場合、手術によって橈骨の骨折をしっかりと固定することで、骨折を治療します(必ずしも尺骨を固定する必要はありません)。近年では、優れた機能を有するプレートが数多く販売されているため、それらを用いて手術するのが一般的になっています。本院でも、手術により良好な治療成績が得られています。
稀に保存療法(ギプス固定)で治療される場合があります。しかし、この方法では75%の確率で骨や周辺の皮膚に大きな問題が発生するとされています。さらに、海外の教科書においては、体格の小さな犬での保存療法(ギプス固定)を推奨していません。そのため、限られた条件(若い犬で、完全には骨折していない など)に当てはまる場合のみ、その方法が検討されています。

手術後の注意点と回復までの過ごし方
手術を実施した犬のほとんどは、数ヶ月かけて、骨折する前のように骨が癒合します。しかし、手術から2週間以内に手術のキズ(術創)を自分で舐めるなどして術創が汚れると、その通りではありません。骨の周辺でバイ菌が増えてしまい、骨が癒合しにくくなります。こうした際には、追加の治療(お薬や再手術)を必要とする場合が少なくありません。そのため、手術直後から2週間程度は、術創を舐めないようにエリザベスカラーを着用していただく必要があります。さらに、体格の小さな犬では、手首周辺の毛細血管が少ないことが報告されており、こうした要因も骨折治療の妨げになる場合があります。
当院では、術後すぐはケージ内などで安静にしていただき、ジャンプやダッシュ等の過度な負荷が前脚にかからないようにお願いしています。
運動に関しては、術後の診察を通じて、徐々に以前の程度まで戻していきます。

骨折を防ぐために、日常でできること
・滑りやすい床(フローリングなど)を避け、滑りにくいマットを敷く
・ソファに登らせないもしくは、ジャンプせずに登り降り可能な段差などを用意する
・抱っこから下ろす際は、4つの脚が全てつくまで体から手を離さない
※小型〜超小型犬では、極めて弱い力でも骨折が生じるので、日頃から注意が必要です

回復まで、私たちがしっかりサポートします
「整形外科の手術」は治療のスタートに過ぎません。術後も私たちと飼い主様が協力し、大切なご家族の治療に取り組んでいく必要があります。そして、私たちは飼い主様を全力でサポート致します。
当院ではこれまでに200症例以上の橈尺骨骨折の手術を行っており、豊富な経験と技術をもとに、わんちゃん一頭一頭に合わせた最適な治療プランをご提案しています。