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犬が誤食したら?危険な食べ物・身近な物と、すぐに取るべき対応

犬がチョコレートやブドウを食べた、おもちゃを飲み込んだ――。誤食では、食べたものだけでなく、量、犬の体重、食べてからの時間によって対応が変わります。症状が出てからでは治療が難しくなるものもあるため、「今は元気だから大丈夫」とは限りません。犬が誤食したときに確認したいこと、危険な食べ物や身近な物、動物病院での治療について解説します。

犬が誤食したら、まず何をすればいい?

まず「何を・どのくらい・いつ食べたか」「犬の体重」「現在の症状」を確認し、危険性が分からない場合は動物病院へ連絡してください。中毒物質や異物の種類によっては、症状がない段階での対応が重要です。

商品を食べた場合は、パッケージや成分表示、残っている量を捨てずに保管します。薬なら薬剤名と含有量、お菓子ならチョコレートの種類やキシリトールの有無などが治療方針を決める手掛かりになります。殺鼠剤も見た目だけでは有効成分を判別できないため、容器や商品名が分かるものを持参してください。

(Merck Veterinary Manual, Principles of Toxicosis Treatment in Animals / Overview of Rodenticide Poisoning in Animals)

自宅で無理に吐かせないでください

食塩などを使って自己判断で吐かせることは避けてください。誤食した物や犬の状態によっては、吐かせることで食道を傷つけたり、誤嚥したりする危険があります。腐食性物質や石油系製品の摂取、意識状態が悪い場合など、催吐が適さない状況もあります。吐かせる必要があるかは獣医師が判断します。

犬が誤食すると危険な食べ物・薬は?

チョコレート、キシリトール、ブドウ・レーズン、ネギ類などは犬で中毒を起こすことがあります。また、人では一般的な鎮痛薬や殺鼠剤も犬にとって危険です。食べた直後には元気でも、時間がたってから症状が現れるものがあります。

誤食したもの 主な危険性
チョコレート・ココア 嘔吐、落ち着きのなさ、頻脈、不整脈、震え、けいれんなど
キシリトール 急激な低血糖。摂取量によっては重い肝障害
ブドウ・レーズン 急性腎障害。安全量を一律に設定することは困難
玉ねぎ・長ねぎ・にんにくなど 赤血球の酸化障害による溶血性貧血
マカダミアナッツ 嘔吐、脱力、ふらつき、震え、高体温など
人用の鎮痛薬など 薬剤により胃腸障害、腎障害、肝障害、神経症状など
殺鼠剤 成分により出血、神経障害、高カルシウム血症など

チョコレートは種類と量で危険性が変わります

チョコレートに含まれるテオブロミンやカフェインは、犬では心臓や神経系に影響します。一般にカカオ含有量の高いチョコレートほどメチルキサンチン濃度が高いため、同じ重さでも危険性は異なります。犬の体重、食べた製品、量を確認して評価する必要があります。

(Weingart et al., 2021, J Small Anim Pract. / Merck Veterinary Manual, Chocolate Toxicosis in Animals)

キシリトールは低血糖や肝障害を起こすことがあります

犬がキシリトールを摂取するとインスリンが急激に分泌され、低血糖を起こすことがあります。量によっては重い肝障害が生じることも報告されています。シュガーレスガムだけでなく、菓子、歯磨き用品、サプリメントなどに含まれている場合があるため、成分表示の確認が必要です。

(Dunayer & Gwaltney-Brant, 2006, J Am Vet Med Assoc. / Merck Veterinary Manual, Xylitol Toxicosis in Dogs)

ブドウ・レーズンは「この量なら安全」と判断しない

ブドウやレーズンの摂取後に、犬で急性腎障害が起きることがあります。一方、報告されている症例にはばらつきがあり、すべての犬に当てはまる明確な毒性量を決めることは困難です。そのため、少量だったとしても「この程度なら大丈夫」と自己判断せず、摂取が分かった時点で動物病院へ相談してください。

(Morrow et al., 2005, J Vet Diagn Invest. / Veterinary Record, 2024 / Merck Veterinary Manual, Grape, Raisin, and Tamarind Toxicosis in Dogs)

玉ねぎ・長ねぎ・にんにくは加熱しても注意が必要です

ネギ属の植物に含まれる成分は赤血球を酸化障害し、溶血性貧血を起こすことがあります。生だけでなく、加熱したものや乾燥・粉末製品でも中毒は起こり得ます。貧血の症状は摂取直後ではなく数日たってから現れることがあるため、すぐに異常がないことだけでは安全と判断できません。

(Yamato et al., 1998, Vet Rec. / Merck Veterinary Manual, Garlic and Onion Toxicosis in Animals)

食べ物以外で危険な誤食は?

おもちゃ、布、靴下、ビニール、石、骨などは、毒性がなくても消化管に詰まることがあります。異物による消化管閉塞は緊急性のある状態で、長時間閉塞すると腸管の血流障害や壊死、穿孔につながることがあります。

特に注意したいのが、ひも、糸、リボンなどのひも状異物です。一部が固定されたまま腸管が動くことで、腸がたぐり寄せられ、腸壁が傷ついたり穿孔したりすることがあります。口や肛門から糸が見えていても、無理に引っ張らないでください。

ボタン電池などの電池類も早急な対応が必要です。電池をかじった場合には内容物による腐食性障害が起こり得るほか、ディスク型電池では食道などに留まることで組織障害を起こす危険があります。

(Merck Veterinary Manual, Gastrointestinal Obstruction in Small Animals / American College of Veterinary Surgeons, Gastrointestinal Foreign Bodies)

どんな場合はすぐに動物病院へ行くべき?

けいれん、意識がおかしい、ぐったりしている、呼吸が苦しそう、繰り返し吐く、強い腹痛、ふらつき、虚脱などがある場合は早急な受診が必要です。ただし、中毒が疑われるものや危険な異物を食べた場合は、症状がなくてもまず動物病院へ連絡してください。

状況 対応
けいれん、虚脱、呼吸困難、意識の異常 早急に受診
キシリトール、ブドウ・レーズン、薬、殺鼠剤などを食べた 症状がなくてもすぐ相談
ひも、電池、大きな異物などを飲み込んだ 自己処置せず、すぐ相談
何をどれだけ食べたか分からない 分かる範囲の情報を集めて相談

マーレ動物クリニックでは、嘔吐や下痢などの消化器症状についても診療しています。診療内容については診療案内をご覧ください。

 

動物病院ではどのような検査・治療をする?

検査や治療は、食べたもの、摂取量、経過時間、症状によって異なります。中毒が疑われる場合には血液検査などで臓器への影響を確認し、必要に応じて点滴、血糖値の管理、症状に対する治療などを行います。

摂取からの時間が短く、犬の状態や誤食物の性質から適応がある場合には、動物病院で催吐処置を検討することがあります。一方、すでに神経症状がある場合や、腐食性物質などを飲み込んだ場合には催吐が適さないことがあります。活性炭もすべての中毒に有効なわけではなく、物質や状態に応じて判断されます。

異物が疑われる場合は、腹部X線検査や超音波検査などで位置や閉塞の有無を確認します。異物の大きさや形、位置、犬の状態によっては経過観察できる場合もありますが、内視鏡や手術による摘出が必要になることもあります。

(Merck Veterinary Manual, Principles of Toxicosis Treatment in Animals / Gastrointestinal Obstruction in Small Animals / American College of Veterinary Surgeons, Gastrointestinal Foreign Bodies)

自宅でできる誤食予防は?

誤食しやすい食品や薬は、犬が届かない高さに置くだけでなく、扉のある収納へ入れる方が安全です。特に薬、ガムや菓子類、チョコレート、レーズン、殺鼠剤などは、バッグや買い物袋に入れたまま床へ置かないようにします。

おもちゃは犬の体格に合った大きさを選び、破損して小さな部品が外れていないか確認します。布、靴下、マスク、ひも、釣り針などを繰り返し口にする犬では、物を置かない環境づくりも必要です。誤食を繰り返す場合には、行動上の問題や過食につながる病気などが背景にないかも含めて獣医師へ相談してください。

犬の誤食についてよくある質問

犬が誤食しましたが、元気なら様子を見ても大丈夫ですか?

元気だから安全とは限りません。キシリトール、ブドウ・レーズン、ネギ類、殺鼠剤などでは症状が遅れて現れる場合があります。危険性が分からない場合も、食べた物と量を確認して動物病院へ相談してください。

犬がチョコレートを少し食べました。大丈夫ですか?

チョコレートの種類、量、犬の体重によって危険性が大きく変わります。カカオ含有量の高い製品ほど少量でも問題になる可能性があるため、商品名やカカオ含有率、食べた量を確認して相談してください。

ブドウを1粒だけ食べた場合も病院へ連絡した方がいいですか?

少量でもまず相談することをおすすめします。ブドウ・レーズン中毒には個体差があり、すべての犬に共通する安全量を設定することは困難です。体重や摂取量、経過時間を伝えて指示を受けてください。

犬を自宅で吐かせてもいいですか?

自己判断で吐かせるのは避けてください。誤食物や犬の状態によっては催吐が危険な場合があり、食塩など家庭にあるものを使った処置も推奨できません。まず動物病院へ連絡してください。

おもちゃを飲み込みました。便に出るまで待ってもいいですか?

異物によって判断が異なるため、最初から便に出ることを前提に待つのは避けてください。小さく滑らかな異物が自然に通過する場合もありますが、閉塞や穿孔を起こすものもあります。大きさ、形、材質、犬の体格などから評価します。

口やお尻からひもが出ています。引っ張ってもいいですか?

引っ張らないでください。ひも状異物が消化管内に引っ掛かっている場合、引っ張ることで腸を傷つける危険があります。そのままの状態で動物病院へ相談してください。

人間用の薬を1錠食べただけでも危険ですか?

薬の種類、含有量、犬の体重によっては1錠でも問題になる可能性があります。人用の鎮痛薬などには犬で胃腸障害、腎障害、肝障害などを起こすものがあります。薬の箱やシートを用意し、薬剤名と含有量を伝えてください。

まとめ

犬の誤食では、食べた物、量、犬の体重、経過時間によって緊急性や治療が変わります。チョコレート、キシリトール、ブドウ・レーズン、ネギ類、人用の薬、殺鼠剤などは、症状がない段階でも対応が必要になることがあります。

また、おもちゃや布、ひもなどには中毒性がなくても、消化管閉塞や穿孔を起こす危険があります。誤食に気付いたら自宅で無理に吐かせたり、見えているひもを引っ張ったりせず、「何を・どれだけ・いつ食べたか」が分かる情報をそろえてください。危険性が判断できない場合や、嘔吐、ぐったりする、ふらつき、けいれん、腹痛などがある場合は、早めに動物病院へご相談ください。

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マーレ動物クリニック|千葉県館山市

参考文献

Weingart C, Hartmann A, Kohn B. Chocolate ingestion in dogs: 156 events (2015-2019). J Small Anim Pract. 2021;62(11):979-983. doi:10.1111/jsap.13329

Dunayer EK, Gwaltney-Brant SM. Acute hepatic failure and coagulopathy associated with xylitol ingestion in eight dogs. J Am Vet Med Assoc. 2006;229(7):1113-1117. doi:10.2460/javma.229.7.1113

Morrow CMK, Valli VE, Volmer PA, Eubig PA. Canine renal pathology associated with grape or raisin ingestion: 10 cases. J Vet Diagn Invest. 2005;17(3):223-231. doi:10.1177/104063870501700302

Yamato O, Hayashi M, Yamasaki M, Maede Y. Induction of onion-induced haemolytic anaemia in dogs with sodium n-propylthiosulphate. Vet Rec. 1998;142(9):216-219. doi:10.1136/vr.142.9.216

Merck Veterinary Manual. Chocolate Toxicosis in Animals. Xylitol Toxicosis in Dogs. Grape, Raisin, and Tamarind (Vitis spp, Tamarindus spp) Toxicosis in Dogs. Gastrointestinal Obstruction in Small Animals.

American College of Veterinary Surgeons. Gastrointestinal Foreign Bodies.