マーレコラム飼い主さま向けコラム
犬は飼い主の夢を見る?寝ているときに足を動かす理由

愛犬が眠っているとき、突然足を動かしたり、小さな声で鳴いたりすることはありませんか。まるで夢の中で走っているような姿を見ると、「何の夢を見ているんだろう?」「飼い主の夢を見ることもあるのかな?」と気になりますよね。実際、犬の睡眠については脳波を使った研究が進められています。今回は、犬が夢を見る可能性や睡眠中に足が動く理由、注意したい症状について、科学的な研究をもとに紹介します。
この記事で分かること

犬も人間と同じように夢を見るの?
犬も夢を見ている可能性が高いと考えられています。犬の脳波を調べた研究では、人間と同じように「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」が確認されており、睡眠中にも脳が活動していることが分かっています。
ただし、犬自身に夢の内容を尋ねることはできません。そのため、人間のような主観的な夢をどのように体験しているのか、直接確認する方法はまだ確立されていません。
犬にも「レム睡眠」がある
睡眠には、脳の活動状態が異なる複数の段階があります。その中でもレム睡眠は、眼球が素早く動くことを特徴とする睡眠段階です。
レム睡眠中は脳が比較的活発に働く一方、体の大きな筋肉は動きにくい状態になります。この仕組みにより、睡眠中に体を大きく動かすことが抑えられていると考えられています。
2018年に発表された研究では、家庭で飼育されている犬の睡眠中の脳波や眼球運動を測定し、レム睡眠中の急速眼球運動が詳しく調べられました。
(Kovács et al., 2018, Learn Behav.)

犬は飼い主の夢を見ることがある?
犬が夢の中で飼い主の姿を見ている可能性はあります。しかし、実際に飼い主が夢に登場することを証明した研究は、現時点では確認されていません。
人間では、起きている間の経験や記憶が夢の内容に影響することが知られています。一方、犬については、睡眠と記憶の関係を調べた研究はあるものの、夢の内容そのものを特定できたわけではありません。
犬は眠っている間に記憶を整理している?
2017年、ハンガリーの研究グループは、犬の睡眠と学習能力の関係を調べた研究を発表しました。
研究では、犬に新しい指示を学習させた後、睡眠中の脳波を測定しました。その結果、学習経験が睡眠中の脳波活動に影響し、一部の脳波の特徴が睡眠後の成績向上と関連することが確認されました。
この結果は、犬の睡眠が学習や記憶の定着に関わっている可能性を示しています。ただし、犬が学習した出来事を夢の中で再体験していることまで証明した研究ではありません。
(Kis et al., 2017, Sci Rep.)
毎日の散歩、一緒に遊んだ時間、飼い主とのやり取り。こうした経験が犬の記憶に残り、睡眠中の脳活動に関係している可能性は十分に考えられます。
もし愛犬が飼い主と遊んだ日の夜に楽しそうに足を動かしていたら、「今日のことを夢に見ているのかな」と想像するのも自然なことです。ただし、それが実際の夢の内容かどうかは分かっていません。

犬が寝ているときに足を動かすのはなぜ?
眠っている犬が足をピクピク動かすのは、睡眠中にみられる自然な筋肉の動きであることが多く、必ずしも病気ではありません。レム睡眠に関連して、足先や顔の筋肉が小さく動いたり、声を出したりすることがあります。
レム睡眠では全身の筋肉の活動が抑えられる傾向がありますが、すべての筋肉が完全に停止するわけではありません。小さな筋収縮が起こり、外から見ても分かる動きとして現れる場合があります。
飼い主を対象とした2022年の調査では、犬が睡眠中にピクピク動いたり、夢を見ているような声を出したりする様子が、多くの家庭で報告されました。
ただし、この調査は飼い主による観察報告であり、個々の動きが実際に夢によって生じたことを証明するものではありません。
(Tooley & Heath, 2022, Animals.)
寝ながら走るように足を動かすのは?
前足や後ろ足を交互に動かし、走っているように見えることがあります。こうした動きも睡眠中にみられる行動の一つです。
夢の中で走っている可能性は考えられますが、足の動きだけで夢の内容を判断することはできません。短時間の小さな動きで、目覚めた後も普段どおりであれば、過度に心配する必要はない場合が多いでしょう。
寝ながら吠えたり、口を動かしたりするのは?
眠っているときに「クーン」と鳴いたり、口元やひげの周囲が細かく動いたりすることもあります。声を出す行動は睡眠中にも認められ、必ずしも苦痛や恐怖を意味するものではありません。
ただし、大きな声で繰り返し鳴く、激しく暴れる、眠るたびに異常な動きが続く場合は、睡眠に関連する病気なども考慮する必要があります。

寝ているときのピクピクは、けいれんとどう違う?
睡眠中の軽い筋肉の動きと、病気によるけいれん発作は見た目が似ることがあります。動きの強さや持続時間、意識の状態、目覚めた後の様子などが判断の手がかりになりますが、外見だけで確実に区別できるわけではありません。
| 観察するポイント | 考えられる状態・対応 |
|---|---|
| 足先や顔が短時間ピクピク動く | 通常の睡眠でもみられる |
| 小さな寝言のような声を出す | 睡眠中の自然な行動の可能性がある |
| 全身が激しく硬直・けいれんする | 発作などの可能性があり、早急な相談が必要 |
| 呼びかけへの反応がなく、意識の異常が疑われる | 緊急性のある病態も考えられる |
| 動きが収まった後も、ふらつきや混乱が続く | 神経学的な異常の可能性があり、早めの受診が必要 |
てんかん発作などでは、全身の硬直や繰り返す筋収縮、よだれ、排尿などがみられることがあります。また、発作が終わった後に、一時的な混乱やふらつきが残る場合もあります。
一方、意識が保たれる部分的な発作も存在します。「声をかけたら反応したから発作ではない」「眠っているときだけだから大丈夫」とは言い切れません。
(Merck Veterinary Manual; VCA Animal Hospitals, Seizures in Dogs)
睡眠中に激しく暴れる病気もある?
犬では、レム睡眠中の筋肉の動きを抑える仕組みが正常に働かず、走るような動きや激しい体動を示す「レム睡眠行動障害(REM sleep behavior disorder)」に相当する症状も報告されています。
2018年には、破傷風と診断された犬を対象とした研究で、回復過程においてレム睡眠行動障害が疑われる異常行動が確認されました。ただし、これは破傷風に罹患した犬を対象とする研究であり、一般の犬に同じ頻度で発生するという意味ではありません。
睡眠中に壁へぶつかるほど激しく動く、自分の体を傷つけそうになるといった場合は、単なる寝相と決めつけずに診察を受けてください。
(Shea et al., 2018, J Vet Intern Med.)
このような場合は早急に受診してください
全身のけいれんが続く、短時間に発作を繰り返す、意識が戻らない、呼吸が苦しそう、体がぐったりしている場合は、早急な受診が必要です。
発作中は無理に体を押さえたり、口の中へ手を入れたりせず、周囲の危険物を避けてください。安全を確保できる場合は動画を撮影し、発作の開始時刻や持続時間も記録しましょう。

犬が夢を見ているようなとき、起こした方がいい?
軽く足を動かしたり、小さな寝言を言ったりしているだけなら、基本的には無理に起こす必要はありません。安全な場所で眠っているのであれば、そのまま休ませてあげましょう。
眠っている犬を突然触ったり、揺さぶったりすると、驚いて反射的に動くことがあります。特に顔の近くへ手を伸ばすことは避けてください。
また、犬にとって睡眠は単なる休憩ではありません。2022年に発表された飼い主への質問票調査では、睡眠時間や睡眠の中断されやすさと、飼い主が報告する問題行動の程度に関連が認められました。ただし、調査から因果関係や適切な睡眠時間を一律に決めることはできません。
生活音や人の出入りが気になりにくい場所に寝床を設け、犬が落ち着いて眠れる環境を整えるとよいでしょう。高齢犬では、夜間の徘徊や睡眠リズムの変化などがみられる場合もあります。
夜に眠れないだけでなく、呼びかけへの反応が変わったり、家の中で迷うようになったりした場合は、以前の記事「犬は飼い主の言葉をどこまで理解している?最新研究から解説」でも紹介しているように、聴力や認知機能などを含めた確認が必要になることがあります。
(Tooley & Heath, 2022, Animals.)

よくある質問
Q1. 犬も楽しい夢や怖い夢を見るの?
犬が楽しい夢や怖い夢を体験しているかは、まだ科学的に確認されていません。寝言や足の動きから、夢の内容や感情を正確に読み取ることはできません。
Q2. 犬が寝ながらしっぽを振るのは、楽しい夢を見ているから?
睡眠中にしっぽが動いても、楽しい夢を見ていると断定することはできません。しっぽの動きは筋肉の活動によるものですが、夢の内容との関係は明らかになっていません。
Q3. 子犬は成犬より夢をたくさん見るの?
子犬が成犬より多くの夢を見ているかは分かっていません。子犬では睡眠中の体の動きが目立つことがありますが、動く回数と夢の回数が同じとは限りません。
Q4. 犬が寝言を言うのはストレスが原因?
寝言だけでストレスがあるとは判断できません。睡眠中の発声は健康な犬にもみられます。ただし、夜間の落ち着きのなさや睡眠の変化が続く場合は、生活環境や体調を確認する必要があります。
Q5. 犬は毎日夢を見るの?
犬が毎日どのくらい夢を見ているかは分かっていません。犬にはレム睡眠がありますが、レム睡眠の回数と実際に夢を体験した回数を同じものとして数えることはできません。
Q6. 寝ているときに目が動くのは異常?
まぶたの下で眼球が動くことは、レム睡眠に伴う自然な現象としてみられます。ただし、目の動きに加えて激しい全身のけいれんや意識の異常がある場合は、通常の睡眠とは別に評価する必要があります。
Q7. 寝ているときの足の動きを動画に撮ってもいい?
安全な距離から撮影できるのであれば、動画は診察時の参考になります。特に、これまでなかった激しい動きが現れた場合は、動き方や持続時間が分かる記録が役立ちます。撮影のために犬を触ったり、危険な状態を放置したりしないでください。

まとめ|犬は夢の中で飼い主に会っているのかも?
犬にも人間と同じようにレム睡眠があり、睡眠が学習や記憶に関係していることが研究から示されています。そのため、犬も夢を見ている可能性は高いと考えられています。
一方で、犬が実際にどのような夢を見ているのかは、まだ分かっていません。飼い主との散歩や一緒に遊んだ時間が夢に登場するのかどうかも、今後の研究が待たれるところです。
眠っている愛犬が小さく足を動かしていても、普段どおり元気であれば、自然な睡眠中の行動であることが多いでしょう。
ただし、激しいけいれん、呼吸の異常、目覚めた後のふらつきや意識の変化などがある場合は、睡眠中の正常な動きとは限りません。気になる症状がみられた場合は、動物病院へご相談ください。
参考文献
1. Kis A, Szakadát S, Gácsi M, et al. The interrelated effect of sleep and learning in dogs (Canis familiaris); an EEG and behavioural study. Sci Rep. 2017;7:41873. doi:10.1038/srep41873
2. Kovács E, Kosztolányi A, Kis A. Rapid eye movement density during REM sleep in dogs (Canis familiaris). Learn Behav. 2018;46(4):554-560. doi:10.3758/s13420-018-0355-9
3. Tooley C, Heath SE. Sleep Characteristics in Dogs; Effect on Caregiver-Reported Problem Behaviours. Animals (Basel). 2022;12(14):1753. doi:10.3390/ani12141753
4. Shea A, Hatch A, De Risio L, Beltran E. Association between clinically probable REM sleep behavior disorder and tetanus in dogs. J Vet Intern Med. 2018;32(6):2029-2036. doi:10.1111/jvim.15320
5. Merck Veterinary Manual. Initial Triage and Resuscitation of Small Animal Emergency Patients.
6. VCA Animal Hospitals. Seizures in Dogs.
7. VCA Animal Hospitals. Unusual pet sleep behaviors to watch out for.
